今これが落ちたら死ぬねと人工の大くらげ乗り青き海底
火の山のコースター乗り頂上で景色は見えず声だけの我
流行をちいさく髪に留めてみるグレンチェックのリボンはグレイ
一日でいいから消えてしまいたい金木犀の香よ匿って
自らを損なう行為知らぬまに習慣となるはたと慄く
数値にはありありと我暴かれて逃げも隠れもできぬ秋なり
一つずつ行事を終えて気がつけば孤独ではない人の掌(て)温し
もう8月も終わりますね。
よく笑いよく泣いた夏でした。
昨年の今頃を思えば、僥倖です。感謝。
卯野抹茶様、皆様、いつもありがとうございます。今月もよろしくお願いいたします。
http://tankanome.hateblo.jp/entry/2017/08/10/212810
8月題詠 5首
1. 流
子を抱き流さるる母丸三つ描いた児童はや12歳
2. 囃
囃し立てかまびすしくも悲しくて彼と彼女の背中見送る
3. フラット
フラットのついてる楽譜読みやすい境目のない音を出したい
4. 西瓜
幾たびもかぶりつきたる紅西瓜溢るるままに夏しづまりぬ
5. こめかみ
その人のこめかみをふと思い出す隣の席で何もできずに
テーマ詠
怪談短歌
ああ確か去年も来たねと君は笑む初めての宿まぼろしふたつ
蓋開けて何もないこと確かめるそして封して地中に埋める
鏡には友達映るだからもうさみしくはないドア閉めてても
ひとりきり香焚く部屋に満ちてくるあるじの気配おかえりなさい
迷宮の標(しるべ)に花を一つずつ落としてくれる君は誰なの
*写真はフリー画像です
暑いですねー。
卯野抹茶様、皆様、今月もよろしくお願いいたします。
7月題詠 5首
1. 透
雨粒の滲む画用紙水彩で君を写した夏が透けゆく
2. ホイップ
もこもこと泡だつネットどこまでも孤独は白くホイップのごと
3. 果
芳香を放つ果実に頬寄せてちくと刺される小さな棘に
4. ペンギン
白黒のペンギン破線よちよちと海の中では疾風(はやて)となりぬ
5. 短夜
短夜にまた涙する届かない夢ならいっそ見失うべき
テーマ詠
あつい
時々は嫌われるよな生き方を選ぶほどには年を取りけり
君が手はいつもわたしを引き寄せる落ちないように逃げないように
汗ばみて拭いきれない悔しさは瞼の中で白刃と化す
頬張ってぎゅいんとのびる白パンのサンドイッチが看板の店
我が掌(たな)のあまりに薄く頼りなく子らの虫捕る指ぞ頼もし
忙しいのがいろいろ落ち着いて、少し時間ができたので、特別お題「『選択』と『年齢』」で書いてみます。
わたしが自分の人生で行った大きな選択と、それをした年齢は、下記の通りです。
34歳以降のことは、選択というよりは運命的な流れであるように思うので、書きません。(選択をしていないわけではありませんが、自分の意志だけで決められる範疇を超えていることが多かったので)。
◆18歳 親元を離れ上京
◆24歳 最初の仕事を辞めて実家へ戻る
◆25歳 被災。再び上京、再就職
◆27歳 結婚
◆34歳 退職
このなかで、いちばんパワーが要ったことは、18歳の時の実家を出たこと。
人生にとって転機となる大きいことは、25歳の時の被災と再上京、再就職したこと、です。
どちらも親に猛反対され、勘当とか絶縁とか覚悟しました。
お金はなく、ただ若さだけで、意思を貫きました。助けてくれる人々、そして最終的には親の許しと助けのお陰で叶いました。
家は出てよかったし、地元を離れてよかったです。わたしにとっては。
それでも、家ってなんだろう。家族とはなんだろう。親子はどういう関係が望ましいのだろう。故郷はどこだろう。と、
今も考えながら生きています。
わたしは多分コロコロと転がる石で、あちこちにぶつかって、今は居所が落ち着きました。多分ここで生きてここで死にます。
その選択をしたというか、そういう流れになって定まったのは、38歳の時です。
わたしはこれからも、許される限りは、選択と年齢を重ねることでしょう。
加齢に伴うあれこれに、あーあ…と思うこともあるけれど、なるべくほがらかに暮らしたいと思います。
にこにこ優しい、笑い皺のあるおばあさんになれたらいいな。
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短歌の目第20回!おめでとうございます。
卯野抹茶様、皆様ありがとうございます。
6月は、良い月でありました。
感謝。
短歌の目 6月
http://tankanome.hateblo.jp/entry/2017/06/10/220329
6月題詠 5首
1. クリーム
クリームを泡立てるたび歓声を上げる子らとの日々ぞ愛おし
2. 溝
溝よけてうまく渡ったつもりでもふくらはぎには泥のしくじり
3. 万緑
万緑の中にあなたを閉じ込めるただ一瞬を許してほしい
4. 雨
くちづけて雨の匂いの君が指わたしの髪をしっとりと梳く
5. きみ
きみどりの下着できみをおどろかす企みはここ胸骨の裡(うち)
テーマ詠
「衣服」
纏えども尽きぬ迷いと欲望は袋に詰めて月曜に出す
わたくしのかたちをみたらそのあとで忘れてもいい今日のスカート
制服を着た子のこころ見えなくてただ整へる折り目正しく
このシャツを着た日のことは忘れない写真なくてもブログなくても
知らぬまに窮屈になる子供服まぶしい命包んでやさし
ああ五月。
卯野様、皆様、いつもありがとうございます。
どうぞよろしくお願いいたします。
短歌の目 5月
http://tankanome.hateblo.jp/entry/2017/05/10/000000
*写真は無料素材をお借りしました
まりおさんの記事を読んで、触発されたので書きます。
http://bakazee.hatenablog.com/entry/2017/05/27/161502
フーファイターズというアメリカのロックバンドの曲に、「ベストオブユー」
というのがあります。
こんな曲です。
メロディも歌詞もよくて、特に歌詞を載せたいのですが以前それをして運営から注意を受けましたのでやりません。
元の歌詞および和訳してくれているサイトがあるので、興味がある方は調べてみてください。
歌詞とか詩とか言葉全般は、発せられた瞬間いろんな解釈をされます。
その解釈が完全に正しいということはなくて、発した側の本意から外れた解釈をされることもままある。
言葉というのは、その言葉から受け手が何を受け取ったか、どう動かされたか、ということでしか、受け止められないのかな、とも思います。永遠のすれ違いもあるかもしれません。
で、わたしがこの曲から受け取ったこと。
それは、
「自分の一番いいもの(ところ)を人にゆだねるな。もし誰かがそれを壊しにくるなら守り抜け。
自分の一番いいものをもし自分自身が壊したり潰したり殺したりしそうになったなら、自分自身からその大切なものを守れ。」
ということです。
わたしはいま幸いにも生きていますが、それなりにいろんなことがありました。
外から潰されそうになったこともあれば、自分が自分を認められずに、潰れそうになったこともある。
そこから、生き残ってきて、ここにいます。大げさだけど。
みんなそうなのではないかと思います。程度の差こそあれ。
自分の一番いいものなんてない、自分にはいいところなんて何にもない。この先生きていてもいいことがあるとは思えない。と思うときは、自分が自分を潰しにきている。だから、潰しにくる自分から自分を守らなくちゃいけない。そのときに、人の助けを借りることは恥ずかしいことでも申し訳ないことでもありません。
あなたがここにいることで、わたしがここにいることで、かけがえのないものがいま生まれている。常に生まれ続けている。寿命が尽きるその日まで、それは続く。
自分では気づくことができなくても、ベストオブユーは絶対にある。そう思います。