12月も1/3を過ぎたなんて!あぁ…
昨日は楽器の消耗品交換で街へ出かけました。よく知らないところなので目がぐるぐる泳いでスマホ地図をもぐるぐる回しながらこのお店を探してお昼を食べた。たいへんおいしかったけれども、わたしも激しく消耗しました。
方向音痴、それはわたしが死ぬまで抱えていく病のひとつです。
そんなことはどうでもいい。
12月短歌の目の自作振り返りをします。参加の皆様の作品は一気に読むのがもったいなくじわじわとスルメ読みしています。全部読んでからまた感想ラブレター記事を書きたいなと願っております。
では、はじめます。
リンクが変ですがどうぞお許しください。
12月短歌の目
はてな題詠「短歌の目」
http://tankanome.hateblo.jp/entry/2015/12/01/000000
12月お題 10首
1. ファー
ファーファぐま 黒い瞳の愛らしき
何も映さず 秘密漏らさず
ファー、は結構好きです。リアルもフェイクも。もふもふ〜ふわふわ〜。業が深いので結構似合います。(西村しのぶさんのコミックス「ライン」で、確か「あんた、業が深いからファー似合うわ!」という台詞がありました。)
で、衣料品のファーととらえて、そのままよもうかな、と思いつつ、へそまがりなので考えた。でも同じ発想をされた方は結構おられましたね。あんころさんのは特にあ!わたしも同じきもち!と嬉しかったです。
で。
衣料用洗剤のファーファという商品のキャラクター、愛らしいぬいぐるみの白いこぐま。外資系のこの洗剤は安くて甘い香りでたまに買います。パッケージも可愛い。
でも、こぐまの目は笑っていません。そもそもぬいぐるみって無表情ですよね。それが動き回りあざとく可愛らしく振る舞い、しゃべるCMの怖さをよく覚えています。
ぬいぐるみは、しゃべらないからいいのに。秘密を打ちあけるには格好の相手です。アドバイスはもらえないけど。
そんなことを思いながら詠みました。
2. 密
これ以上 密度高めて触れ合えば
暁(あけ)には融けて 紅櫛遺す
「密」を使う言葉はいくつもありますが、秘密は前の歌で使ってしまったので、密度、にしました。密閉、とかもいいけれど。あ、今度詠もう。
わたしは三十一文字というと、百人一首や教科書に載っていた与謝野晶子さんがやっぱり入り口なので、10首のうち一首は恋の歌を詠みたいなと思うのです。それで、よみました。
あとは、昔読んだ民話に「ゆきむすめ」というのがありました。「雪女」は悲しく怖い話ですが、ゆきむすめ、はかなしい話であった。最後は溶けて紅い櫛だけが残ります。
この二つをくっつけました。
3. LED
永き時光るとぞ云ふLED
人なき世をも照らす日の来る
家の中の灯りをLED電球に交換することが増えました。物によっては、忘れるくらい、ずいぶん長持ちするという。わたしは白熱灯の光が好きですが、LEDもそれに似せたものもありけっこう自然だったりします。
一方でLEDというとやはり青い光が脳裏に浮かびます。あの青は、衝撃的でした。
その青い光に包まれた、ひとはもういなくなった未来都市の静けさを想像して詠みました。
4. グレーゾーン
この冬はやたらにグレイの服を着る
グレーゾーンで安らぐ心
昔はグレイは苦手な色で、どうにも似合わず着こなせませんでした。友人はよく似合っていて、おしゃれ!とうらやましかった。
いまはなんとなく着て、可もなく不可もなしです。 グレイの服を避けることはなくなりました。
グレーゾーン、という言葉はあまり良いイメージがないのですが、その曖昧な地帯でホッとする自分も確かにいるなぁと。
グレイの服が着ごこち良いように。
5. くま
ちくま文庫読みて語りし若き日の
友の眼(まなこ)の輝きいまも
ちくま文庫は、面白い本が多かった。結構分厚くて。
学生時代、これ読んだ?面白かったよ!貸すよ!って瞳をきらきらさせながら、本好きの友人が駆け寄ってきたこと、書店でちくま文庫のコーナーを見るときの愉しさを、懐かしく思い出しながら詠みました。
6. 石
いくつもの石飲み込んで石を生む
我が生き方と腎臓は似て
わたしはしゃべるときにはしゃべるけど、黙っているのも好きで、けたたましい人やむやみに話しかけてくるうるさい人は煩わしいと思うし、(すみません)、口は禍の元と思うこともあります。違和感や反論を、黙って胸にしまう、ことがどうも多いような気がします。
でもそれは、石を吞み込んでいるようで。そういうのはよくないかな、とも思い、性格は変わらないけれど、なるべくそうしないように、考え方やものの見方を変えたり、好きなことで発散したり、こうして書いたりしています。
腎臓結石持ちで、身体の中に石が実際できる不思議と、それが排出されるときの問答無用の痛みも思いつつ、詠みました。
7. イエス
イエスイエスイエスいくたび聞かれても咎められても同じく答う
わたしは特定の宗教に帰依してはいませんが、歴史の授業で習ったキリシタン弾圧の踏み絵とか、幾多の障害を乗り越えて強い愛情で結ばれる(あるいは結ばれない)、小説の中の二人を思いました。
あと、中学生の頃友達の勧めで聞いた、オフコースのあの曲。
8. 鐘
沈黙の寺に響ける水の鐘
ぽとりぽとりと心臓穿つ
ドビュッシーのピアノ曲に沈黙の寺、というのがあります。タイトルが面白い。どんなお寺?と、子供のとき思った。とても美しい曲です。
水の鐘、は想像で作りましたが、水琴窟のようなころんころんと澄んだ音がするのではないか。鍾乳洞の滴りが何百年もかけて奇石を作るように、ぽとりぽとりと落ちる小さな滴の秘めた力。
しずく、ってこわいかもしれない。小さなかそけき音だからこそ、耳について眠れないこともある。心臓に穴だって開くだろう。
9. 氷
歓びも嘆きも全て氷にし
留めおけるなら今この時を
短歌、短歌の目、今このひとときに思うこと。今そのもの。を、大切にしたいと思います。
10.【枕詞】降る雪の
降る雪の真白を薄く重ねゆき
覆い隠さん疼く孤独を
枕詞は必ず縛りがありますが、今回の降る雪、はイメージがもうこれしかない、と貧困で広がらない中、あまり衒わず考えすぎずにそのまま詠みました。
雪の降りはじめの、地面に粉砂糖をふりかけるようなうすく積もる時が好きです。下の句はもっとさりげなく表現できないかと思いましたが、ストレートな言葉しか浮かびませんでした。
孤独、と言えるようになったのも、加齢のおかげかと思います。若い頃は思っていても言えない言葉の一つでした。
以上、蛇足にょろにょろ、の自作解説でした。長いのをお読みくださりありがとうございました!
◆お詫び追記◆
ごめんなさい。ドビュッシーのピアノ曲は「沈める寺」でした。ほかに「沈黙の宮殿」という作品があり、ごっちゃになったものと思われます。深くお詫び申し上げます。