ほしいぬ

書いたり、詠んだり。

2020-01-01から1年間の記事一覧

失い、続ける物語

*「鬼滅の刃」映画、原作、アニメーションについての感想です。内容に触れますのでこれからお楽しみになる方は読まないでください。 先日、映画「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」を観てきました。息を呑み、鳥肌が立ち、たくさん涙を流しました。素晴らしい作…

かんらん車

かんらん車こころを雲が吸いよせてゆっくり日々へ降りる支度す 秋薔薇の慎ましやかに仕立てられ棘も香りも憚らず咲け ハロウィーン小さき魔女の群れ集い憂鬱な煤を箒でさっさ 粉ふるいバターを溶かす娘の手頼もしくあれ柔らかであれ 君の名を呼ぼうとすれど…

よろいの夏

あどけないおっさんみたいなかき氷マスクとともに鎧を解こう 息苦し熱に炙られ戦中と戦後の夏に水を手向ける 友達にパンを送る日秋風を雨雷(あめいかづち)が一瞬見せた 病えて首相の代るこの国の疲れを拭うタオルはないか 連れてってくださいコロナが来る前…

名残の薔薇

開園を待っていたよに咲いていた名残の薔薇にわたしほころぶ 海眺むベンチはテープ縛されて怒りは真の敵にぞ向ける いたましき事件に怒り熱帯びて痛み傷まし悼みつつ生く コロナ禍は尊き命日々奪い悪を露わに見せつ流れる 良きことを砂金のごとく掬いあげ善…

とんとんと

とんとんと野菜を刻む台所いつものようにいつも通りに 三色の花が一つの木に咲いて桃紅白の個性うつくし 自らを励ます香りしのばせて御不浄掃除きゅっきゅと磨く 常の日の喜び今は叶わぬが傘のお家を子らと作りぬ 終息し心たいらに生きる日を迎えんために「…

順番に

順番に春はカーテン開けてゆくさよならを言う準備をせよと 眼裏(まなうら)に君の体温陽のひかりいつしか白く忘るるとても 先端は透明なまま青空を切り取る花の香のみ憶えて 未だ咲かぬ蕾の黄金(こがね)つやつやと弾む命をぐっと湛(たた)える 花の枝束ねるひ…

春を待つ

不死鳥のごとき希望は重たくてそれでも春の足音ぞする 春眠やまぶたにつもる薄雪を払いて蒼き夜明けをのぞむ 白い空雪降りなむと仰ぎ待つ子らの頭(こうべ)を風撫でわたる 温めたタオルを首にあてがいてこの子の痛み溶けよと願う ほがらかな笑顔はどんな刃よ…